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2016年度 [ 地域志向 ] 高校生の遺伝学的検査の理解を支援する実習形式教育プログラムの開発

2016年度 [ 地域志向・概要 ] 高校生の遺伝学的検査の理解を支援する実習形式教育プログラムの開発

取組代表者

宮地 勇人 【医学部医学科基盤診療学系 教授】
(伊勢原校舎)

共同取組者

浅井 さとみ(東海大学医学部基盤診療学系臨床検査学 教授)、井上 陽子(東海大学医学部基盤診療学系臨床検査学 研究員)、永川 明香(東海大学医学部基盤診療学系臨床検査学 助教)、梅澤 和夫(東海大学医学部外科系救命救急学 講師)、松澤 秀之(東海大学医学部研究支援センター遺伝子部門)、谷亀 博久(伊勢原市教育委員会教育部長)、ダムディンスレイン アナラ(東海大学医学部基盤診療学系臨床検査学 研究員)、岩下 英夫(東海大学医学部基盤診療学系臨床検査学 研究員)、井上 陽子(東海大学医学部基盤診療学系臨床検査学 研究員)

取組の概要

 高校生は生物学でDNA、遺伝子を学ぶが、理解は必ずしも十分でない。本研究課題では、地域アウトリーチによる高校生における遺伝学的検査の理解の支援に加え、その取組みを通して医学部学生(医学生)の遺伝学的検査に関する理解を深め患者説明能力を培うことを目的とした。高校生が医学部にて実践的な遺伝子解析実験を体験することに加え、医学生が主体となって一連のプログラムを進行することで、双方にメリットのある取組みである(図1)。
 本学の医学生(7 名)は教員の監督のもと、インストラクターの役割を担い、地域在住の中・高校生(男性2 名、女性5 名)に講義や実習を実施した。教材は、医学部選択必修「DNA 診断実習(2 週間コース)」で医学生が準備し、中・高校生のため1 日実習コースを開催した。実習コース前に医学生は、基本的な指導方法についての講習を受けた。講習の一環として、指導法に卓越した小学校教諭の講演会も開催した。
 遺伝学的検査の検出対象は肝臓の薬物代謝酵素UDPグルクロン酸転移酵素遺伝子UGT1A1 の変異である。変異があると酵素の働きが低下し、抗がん剤(イリノテカン等)治療で副作用の重症度(高い)を予測できる。教材のポイントは、①DNA 抽出、②PCR 法、③制限酵素の働きと④ゲル電気泳動法を学ぶことであった。事前学習資料を踏まえ、1日で全てを体験できるよう工程を工夫した。高度な内容もインストラー役の医学生のマンツーマン指導で、実験の空き時間を利用して質疑応答できるようにした。

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図1 地域アウトリーチによる双方向性の教育プログラム

取組の成果

 参加者(中・高校生)とインストラクター(医学生)における成果は、以下のごとくである。

<医学生>
① 遺伝子解析の実験を通して、臨床に必要な科学的洞察力のバックボーンになる経験をすることができた。
② 遺伝学や遺伝子解析結果について、中・高校生へ説明するという経験を通して、医療の現場に出た際、患者に解りやすく説明するスキルを学ぶことができた。
③ 教育指導方法の習得は医療チームのリーダーとして指導的役割の素養となる経験ができた。

<中・高校生>
① 通常の授業ではできない遺伝子解析の実験を経験でき、知識を深めた。
② 将来の進路を決定する参考機会となった。

 参加者は実験プロトコールに従い、PCR 産物と制限酵素で反応させたサンプルをゲル電気泳動した後、自分で結果を解釈し、インストラクターと議論をした。参加者は全員、実験の正確な結果を得ることができた。評価として、実習の前後で参加者アンケートを行った結果、実習後で各項目のスコアが上がる傾向が見られた。
 この企画でインストラクー役の医学生は、遺伝学や遺伝子解析の理解向上に加え、科学的洞察力のスキルを高め、専門知識を持たない者に対する説明能力という職業的スキルを身につける機会になった。

  • 取組テーマ:大学開放
  • 対象者  :指定なし
  • 連携自治体:伊勢原市