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2014年度 [ 地域志向 ] 平塚北西部人口減少想定地域における「産官学民」協働型観光まちづくり計画

平塚北西部人口減少想定地域における「産官学民」協働型観光まちづくり計画

取組代表者

田中伸彦 【観光学部観光学科】
(代々木校舎)

共同取組者

本田量久(観光学部観光学科)

取組の概要

「産官学民」4者協定を実現した平塚市「ゆるぎ地区」を対象に、地域活性化の取組を推進している。現在、4者で「湘南ひらつか・ゆるぎ地区活性化に向けた協議会(以下協議会)」を組織運営し、東海大学は、「学」の立場から里山環境を活かした観光まちづくりの研究に取り組んでいる。

協議会全体としては、年に数回、公開のワークショップ(WS)を開催するなどして、地域の一般市民らとともに、観光資源の発掘や里山再生、地元の素材を使った食材開発などを行っている。東海大学は「学」の立場から、2010年度から取組に加わった。そして2013年度からTo-Collaboプロジェクトを活用して、ゆるぎ地区における観光まちづくりの方向性に対する客観的エビデンスの提示を行う研究を進めている。

 

取組の成果

2013年度は、メッシュマップ解析を用いたゆるぎ地区の観光目的地としてのポテンシャル評価を行った。その結果、地域内には、既存観光資源や施設は少数散在するに過ぎないが、一方で富士山や丹沢山系、江の島、都心高層ビルなどの展望地としてポテンシャルが高いことが分かった。そのエビデンスを踏まえ、協議会と協力して、新たな観光資源を発掘すべく「地域の宝探し調査」を行うとともに、「吉沢八景選定プロジェクト」に着手し、ゆるぎ地区の美しい風景の公募を開始した。

上記の進捗状況を踏まえて、今年度は「学」の立場から、まず八景選定活動に関わる客観的エビデンスを定量化する研究を推進した。具体的には、2014年9月に里山体験を行った子ども団体の引率者17名(大人)を対象に、写真投影法による調査を行った。手順は、対象者に印象的な活動風景写真(約200枚)を撮影・提出してもらい、その写真をKJ法でクラスター分類し、里山利用者の視覚的嗜好特性を明らかにした。その結果、八景候補に挙がる傑出した風景が確実に印象に残ることが実証された一方で、谷筋の小川に掛かる木の橋や小さな植物、同行者の行動など、八景で選定され難い添景、至近景、活動風景などの選好度も高いことが示された。従って、吉沢八景と添景等との繋がりを考慮した活動プログラムの開発が今後必要であることを客観的見地から提示することができた。

また、社会学的フィールドワークで、住民の地域づくりへの意向を明らかにした。その中で、旧住民と新住民の双方が交流・連携を重ねながら、新たな農村コミュニティの構築を図ろうと努めていることを確認した。農村コミュニティは、概して閉鎖的な傾向があると指摘されるが、例えば旧住民A氏は、人口減少に直面するゆるぎ地区が存続するためには新興住宅地めぐみが丘住民の地域活性化に向けた協力が条件であるとの認識を示した。他方、新住民B氏によれば、めぐみが丘住民は、高齢化する旧住民の生活支援(買い物、掃除など)に関わるなど、旧住民との信頼関係を醸成しようと努めていた。ゆるぎ地区の人口減少を背景とした以上の状況にあって、近年では、吉沢青年親和会が主催する納涼盆踊り大会、東京農大や本学が協力する地域活性化WSなどを通じて、新旧住民の交流・連携が進み、職業、ライフスタイル、価値観などの多様性を許容しうる、ゆるやかで持続可能な農村コミュニティの構築が進展するなど、地域活性化の成果を確認することができた。

なお、上記2つの調査は東海大学「人を対象とする研究」の承認を経て行われた。

  • 取組テーマ:地域観光
  • 対象者  :指定なし
  • 取組タイプ:研究