取組の概要
本取組みでは、大学推進プロジェクトの『環境保全事業』として、『環境保全型社会に向けた次世代育成の取組み』をサブテーマに設定し、各種取組みを行う。
◎湘南校舎藤野班では金目川水系をフィールドに以下の取組みを行う。
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教育機関への支援方法の確立を目指し平塚市立大住中学校地域学習支援
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学校プログラムの発展を目指した近隣小学校(秦野市立大根小学校、伊勢原市立比々多小学校、他現在調整中)への授業(理科及び総合の学習の時間)支援
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特別活動における環境教育として部活動を対象とした出前授業・連携活動の実施
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イベント型学習として、昨年度も実施した『川の勉強会』の開催
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学校教育で積極的に環境教育に取り組むことが出来るような河川環境教育補助資料(マップや支援団体情報まとめサイト)の試作
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昨年度から試行的に実施している他地域への取組みの発展として、付属静岡翔洋小学校を基点とした清水地域での河川環境教育を行う。 これらに加え、地域住民とともに取り組み、多世代連携を主眼とした
- 秦野市にあるおじり公園における活用方法の検討
- 大山地域におけるエコツーリズムへの創出の可能性 についても現在検討を行っている。
◎札幌校舎、竹中班では、テーマを昨年度まで地域志向教育研究経費で実施してきた『コムクドリの生態と渡りを解明し保全を考える―地域と大学の協働活動として―』の継続、発展として以下の趣旨で取り組む。
札幌を含む北海道の鳥の70%近くが、東南アジアなどから渡ってくる渡り鳥であり、身近な鳥のほとんどが渡り鳥といっても過言ではないが、その事実はあまり知られていない。身近な生き物が実は世界とつながっていることを理解することは、身近な自然を大切にすることが世界の自然を保全することにつながることの理解につながる。このような視点を子供のうちから持つことが大切である。このような専門的な情報の地域への供給役として大学が機能し、コムクドリをはじめとする野鳥を通じて地域が結びつくような仕組みを作り上げる推進力になると期待している。
◎清水校舎、千賀班では、『水生生物を考える学生サークルの地域連携』をテーマとして以下の通り実施する。
- 地元商店街、ショッピングモール等での環境関連イベント、翔洋高校が主催するDream Science 2016に参加し、地元で採取された水生生物の展示を行い、地元環境の素晴らしさを伝える。展示説明は学生サークルが主体的に行う。(5月、8月)
- これまでのモニタリングの成果を冊子にまとめ、地元の小中学校の教材として利用してもらう。
以上、各自の取り組みの成果から、地域や職種年代を横断し、複合的且つ多角的なものの捉え方ができる『環境保全型社会に向けた次世代育成の取組み』をテーマとしたシンポジウムを開催する。
取組の成果
●主な実施内容
◎藤野班
今年度は昨年度までの活動を更に充実させた形で、親子の川の勉強会夏2 回(二日間の日程の計四日間)の実施、比々多小学校主催の里川ウォーキング及び生物観察会の企画・実施、大住中学校での総合的な活動(地域学習)の年間を通じた授業サポート(延べ40 回程度)、付属静岡翔洋小学校科学クラブを起点とした清水地域での展開において付属静岡翔洋小学校ではタツノオトシゴやグソクムシ・水生昆虫の観察やボードゲームを使用した河川の生態系学習を実施、水質浄化実験、清水三保第二小学校では五年生は海岸浸食・六年生は身近な生物の出前授業を実施、他地域での取り組みの視察として高崎経済大学が主催する生物観察会への参加、湘南里川づくりフォーラムの開催の実施を行った。
◎竹中班
コムクドリの生態調査として、昨年度からの継続として、巣箱設置、初認日確認、営巣つがい数把握、標識調査1(親鳥への足環つけ・選択個体に位置記録装置装着)、繁殖率等の調査、標識調査2(ヒナへの足環つけ)、巣立ち日調査、渡去日調査、行動記録(動画)を行った。加えて、越冬地の調査のためにコムクドリに装着したジオロケーターを回収し、蓄積されたデータを解析し、札幌校舎に飛来するコムクドリの越冬地はインドネシアのフローレス島であることを明らかにすることができた。地域の自然は世界につながっていることを虫と鳥の関係等から実感してもらう企画さらに、「ある渡り鳥(こむくどり)にまつわるものがたり」というタイトルで、地域向けの学習会を2017 年1 月14 日の10:00-12:00 にもいわ地区センターにて実施し、地域住民16 名が参加した。前半は生物学科の4 年生がそれぞれの得意分野を生かし、身近な生き物の紹介を行い、後半は標本に直接触ってスケッチや、画像や動画を見てもらう機会を設けた。
◎千賀班
出展活動(依頼分も含む)として・清水港フラワーフェスタ(来場者14,000 人)・ドリームサイエンス in Shimizu 2016(入場者3,500 人)・アクティブ三保2016(入場者100 人)・海洋学部建学祭(来場者5,000人)・静岡自然体験ミュージアム(入場者2,500 人)・科学の祭典in 静岡(入場者3,000 人)等を行い、定点調査活動では・巴川水系・庵原川・伊豆妻良地先等で実施し、ボランティア活動は付属静岡翔洋幼稚園 (移動水族館、サマーキャンプ川・海)・観音崎自然史博物館夏期臨海学校・学芸員サポート・清水三保海岸定期清掃活動・静岡麻機池柴あげ漁等を行った。
●成果・課題
今年度より大学推進事業となったこともあり、共同取組者の増加により非常に活発な活動が可能になった、特に藤野班では他地域への発展として、清水地域での取組みを行ってきたが、昨年度までの付属小学校のみならず、清水三保第二小学校においても実施ができ、また単発的ではなく、通年の長期的な取組みができている。来年度は千賀班との連携も踏まえ更なる継続性の確保に努めていく。また、事業内ではもちろんのことだが、他地域の視察により、今年度の取組みのヒントを得ることができ、また、今後双方の取組みにおいて連携していけるよう意見・情報交換を行った。加えて昨年度までも多くの学生が参画していたが、特定の学生が関連することが多く、偏りがあったが、今年度は複数の学生がそれぞれの卒業研究・修士論文研究を地域において施行する機会を得ることができている。しかしながら、活動やイベントが先行してしまい、学生が主体となって実践を行う、また、その自覚を促すきっかけ作りという点ではいずれの活動も十分とは言えず、これまでの活動から、更なるサポート体制を築き、継続的な活動を見据えていく必要がある。
この点においては、シンポジウムでの情報交換や意見交換が非常に効果的であり、藤野班は環境教育をどのようなプログラムを取り組んでいくかメインとしており、竹中班は調査研究をメインとしており、千賀班は様々な活動を外に発信していることをメインとしていることから、環境保全事業として、本事業の方向性を改めて確認できる機会であり、それぞれの役割や事業としての意識統一を明確化することができた。