取組の概要
地震、豪雨、津波等の大規模な自然災害が避けられない我国では、発災前、発災直後、発災後の時系列を考慮した対応策を事前に準備することが必須である。例えば発災直後、被害を最小限に食い止めるには、避難計画や迅速かつ的確な情報収集とその伝達、さらには救援活動方法の事前検討が重要である。
本取組では、昨年度の成果をもとに多様な災害への対応を目指すとともに、各校舎で自治体との連携により実施されている学生プロジェクト等の取組をもとに自治体や地域住民との連携を図る。また、災害救援協力体制・システムの構築にあたっては、パブリックアチーブメントの一環として学生を巻き込む形で推進する。
取組の成果
7月に全体会議を開催し、本プログラムにおける研究の位置づけと意義を再度確認して共有した。12月13日(土)には「住民、行政、大学が協力し合う防災・減災及び救援」と題したシンポジウムを東京都港区の後援のもとで開催した。第1部でメンバー3名による取り組みの紹介と行政(港区)から東日本大震災時の対応についてご報告頂き、その後「学生(大学)と地域住民、行政との連携・協働をどのようにして進めるか?」をテーマにパネルディスカッションを行った。シンポジウムには港区のみならず秦野市、平塚市等から合計55名が参加し、同様なシンポジウムを他地域でも開催してほしいとの強い要望が寄せられ、本テーマに関する関心の高さが伺われた。シンポジウムを通して本取組の重要性と必要性があらためて確認されたことは大きな成果である。各校舎の10名からなるメンバーは、それぞれが取り組む研究課題についてそれぞれに成果を得ている。それらの成果は、発災前、発災直後、発災後の時系列を考慮し以下のようにまとめられる。
・発災前の地震予知のためには、まず地下でどのような地震が起きているのかをビジュアルに表現する「地下天気図」プロジェクトを推進した。その結果を地域住民等にもTVやメディアを通じて発信した。
・巨大台風やゲリラ豪雨などの河川氾濫の対策として、安価で手軽に設置でき定期的に画像ファイルをサーバに送信する機能を持つ河川簡易監視システムを開発した。
・大磯・平塚西部海岸における津波浸水避難予測を実施した。昨年度の予測結果を踏まえて、修正慶長地震津波が来襲するまでにかかる時間を計算し、地震発生後、迅速に避難すれば、ほぼ全域で安全に避難できることを明らかにした。
・災害発生時に適切な避難支援情報を提供するシステムの開発を進めることで、地域住民の日常生活支援や非常時の救援体制の構築を手助けでき、対象自治体における「安全・安心なまちづくり」に貢献できる。災害時のツイートをジャンル分類し、地図上にマッピングするシステムの開発に取り組み、プロトタイプが完成した。また、地域の安全安心ネットワークを構築する足掛かりとして、androidアプリケーションによる携帯端末からのデータ送信環境を構築した。
・中高生に、自助能力、互助能力、共助能力への関心を高めるために「中高生のための災害外傷予防教室」を2回開催した。
本取組には多くの学生が関与するフィールドがあり、今後、パブリックアチーブメント型教育の推進がおおいに期待できる。