取組の概要
日本の地域文化の中で、神輿渡御は宗教的な意義を越えて年長者から若者への教育の場、そして若者が新しい技術と見識を導入することを通じて地域社会を進化させる場として古来から機能してきた。しかし、地域の都市化にともない神輿渡御のこれらの機能は急速に喪失されていきつつある。これは神輿渡御に関わる集団の老齢化と固定化、本来新たに参加することが期待される若者集団の減少と地域社会からの分離が主な原因である。本プロジェクトは、若者集団として本学学生が地域文化を学ぶとともに本学で習得した情報技術を通じて地域社会の振興に貢献することを目的としている。
取組の成果
本プロジェクトと提携する団体は、秦野市を拠点とする今泉神社御輿保存会である。研究代表者による事前調査の結果、本保存会として、1)若い人たちに神輿渡御の面白さを体験するとともに、自分たちが学び継承してきたものを教えたい。2)学生が得意とするIT技術を使って、効率的な組織の運営と安全な神輿御渡が行えるとありがたい。3)SNSなどをつかって広報宣伝してほしい。といった意見があった。また、4)東海大学の学生たちの教育・研究活動に貢献したい。そのために、学生たちから要望があれば、精一杯答えて行きたいという声も多数の会員から寄せられた。
To-Collaboプログラム採択後、情報科学科の学生達に対し本趣旨を説明し、参加者を募った。その結果、1)神輿御渡の準備・実施を若い力でサポートしたい。2)保存会の活動に役立つAndroid端末用の情報ツールの開発したい。3)FaceBookやtwitterなどのSNSおよびYoutubeを使って若い人向けに情報発信をし、若い新入会員を増やしたい。4)バーチャルリアリティ技術を使って神輿御渡を手軽に楽しめるようにして神輿ファンを増やしたい。という提案があり、プロジェクト参加教員3名がアドバイザーなってこれらの活動を支えてきた。5)GPS技術を使って安心安全な神輿御渡に貢献したい。
その結果、1)神輿渡御に関して、「横浜開港祭 みこしコラボレーション」に保存会メンバーとして参加し、早朝から夕方遅くまで会員たちと報告・連絡・相談しながら、準備・運営・実行・撤収に大いに活躍し、若者集団として保存会の活動を盛り上げた。2)Android端末用の情報ツール開発に関しては、学生たちが自主的に会員たちにインタビューを行った。その後、インタビューによる聞き取り調査の結果から、要求定義・要件定義を行い、情報ツールの作成を開始した。完成した情報ツールの実証試験に関しては、4月の例大祭に向けて保存会が頻繁に会合を持つ2月下旬以降を予定している。3)SNSやyoutubeを使った若者向け情報発信に関してはコンテンツの調整を行ったあと3月以降の配信を予定している。4)バーチャルリアリティ技術を用いた神輿渡御シミュレータに関しては、来年度のオープンキャンパスや学園祭における学科展示を行い多くの来場者に体験していただく予定である。この展示を通じ、本学の取り組みと教育について学外の方々に理解していただくとともに、神輿に興味を示した受験生には東海大学入学後に今泉神輿保存会を紹介したい。