取組の概要
全国に分布する校舎周辺地域の観光を通じた地域活性化を図り、それらを全国規模で整理統合することで、着地型観光の推進を基礎とした、今後の観光立国の方法論を確立する。
各地域において、それぞれの観光魅力の周知・発信を目的としたモニター・ツアーの実施、観光地図の製作を実施し、情報共有を図りながら、観光・地域振興の方法論を検討し、得られた成果について大学・当該地域外の行政・観光事業関係者や一般の方々に報告し、意見を聴取し、その結果を踏まえて、各校舎・地域で報告会を開催して、計画のさらなる深化を図るとともに、次年度の事業計画を決定する。
地域・校舎間の連絡をさらに密にし、TV会議等で協議しながら、年次報告書を作成・刊行する。
わが国の政治・社会・経済機能が東京へと一極集中してきたことに伴い、現在、地方の市区町村の存立が危ぶまれている。この危機的状況を救うためには、人々が地域内で職を得て、子育てをし、その後の世代も安心して暮らすことのできる、経済的に自立した地域社会を作ることが必要である。地方創生の一助として期待されるのが、観光による地域振興である。しかし、観光振興は、利害関係をもつ地域内の諸団体や、行政単位に縛られた市区町村だけではなしがたい。これらの団体や行政単位をつなぐのが、大学の重要な役割だと考えられる。
湘南・代々木校舎の観光学部は、湘南校舎近傍の市町村・観光協会と、熊本校舎の経営学部は、南阿蘇地域の町村と、札幌校舎の国際文化学部は、札幌市南区の諸地域並びにその構成諸団体と連携しつつ、それぞれの地域特有の観光資源を生かした地域活性化を推進する諸活動を行うこととした。この試みは、2014年度以来継続してきたが、本年度は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催決定を契機に増加してきた外国人観光客に対する効果的な接遇と、観光資源の発掘・開発をめざして、その理論的展望と具体的ノウハウを共有できるデータベースの構築、さらには、全国各地での応用的展開の可能性を探ることを目的としている。
取組の成果
本プロジェクトでは、各校舎が立地する地域の特性に応じて、各校舎独自のプログラムを策定し、その方法の有効性や結果の分析を、Eメールの交換とTV会議の開催を通して本事業全体で行い、12月20日には代々木校舎で全体シンポジウムを実施した(報告書は3月末刊行予定である)。各校舎の取組みの成果は、以下の通りである。
1) 湘南・代々木校舎:丹沢湘南地域において広域観光連携によるインバウンド観光の可能性を探るため、観光学部の学生が主体となって秦野市、平塚市、伊勢原市、厚木市を巡る外国人向けの広域観光バスツアーを企画・実施した。丹沢湘南観光連携会議メンバーの協力を得ながら学生による調査および企画検討とともに、バスツアーのガイドも学生に担わせた。これにより、丹沢湘南地域における外国人向けツアーの方向性が明確化されるとともに、学生のためのきわめて有益な実践的な教育の機会となった。
2) 熊本校舎:旅行会社、宿泊施設、観光施設並びに、行政機関、旅行会社、農業、商工業、金融業などDMOの形成に関係の深い関係者を対象に、インバウンド観光の現状と課題についてインタビュー調査を行った。インタビュー時の意見交換や調査結果のフィードバックを通じて、外国人旅行者を受入れる上で、DMOが重要な役割を果たすことの共通認識を得ることができた。調査では、Wi-Fiの設置や言語対応、人材の確保など多くの問題点が指摘されており、これらの課題については、今後関係者間で解決策を考案することにしている。
3) 札幌校舎:3つのプロジェクトを実施した。①札幌軟石未来PJでは、教員の指導のもとに学生が軟石の作品を作り、「札幌手作りフェスティバル」等に出品するとともに、軟石作品作りワークショップも開催し、札幌南区の観光客用グッズの試作を行った。②“南区暮らし”活性化プロジェクトは、言語を超えたピクトグラムを利用して、商店街のマップを作成する試みであり、デザイン会社の指導のもと、付属四高と本学大学生の協働のもとに進めており、2月末にアイコンとマップが一体となった「藻南商店街グローバルマップ(仮称)が完成する予定である。③札幌モバイルフォン・フォトラリーPJは、本学学生とスウェーデンからの留学生がチームを作って南区の魅力を発見するフォトラリーを行い、既存の名所と共に新たな名所の発見を行うもので、その成果は、①の活動成果も取り入れ、「南区ロゲイニングマップ(仮称)」として取りまとめる予定である。