取組の概要
本研究は、絶滅危惧種であるオオルシシジミをはじめとした動植物の生息調査と保全活動を行うものであり、オオルリシジミの生息環境について詳細な研究を行うとともに、今後の環境啓発活動や保護活動のためのデータベースの構築を行うものである。
本種の個体数は、火山活動、天敵の個体数の推移などの要因により変動するが、近年、愛好家による本種の終齢幼虫の採集が横行し、一部の生息地では、最も最盛期の個体数が多かった2006年に比べて1/10程度の発生となってしまった。どの程度の採集圧が本種の個体数を減少させるのかについては今後調査が必要であるが、本種とその生息環境を次世代に残していくためには不法採集を野放しにできない状況となっている。また、セイタカアワダチソウなどの外来種の侵入により生息環境が急速に悪化しており、本研究では、本種の生息環境の復元方法の解明と阿蘇の草原の生物に関するデータベース構築に取り組むものである。
取組の成果
- オオルリシジミが生息する南阿蘇村および阿蘇市の草原において本種をはじめとした昆虫類の生息調査を両地方自治体の許可のもと実施した。また、データベースの構築を目的として野生植物の種子を収集に着手した。昆虫などの画像データベース構築については、3D画像撮影技術の開発を行い、一部のマテリアル撮影を完了し、データベース構築に着手した。
- オオルリシジミの野外における生態や他生物との関係解明について調査した。
- オオルリシジミの個体数が著しく減少した南阿蘇村のかつての生息地においてチャレンジプロジェクト「阿蘇は箱舟」の学生と協力して本種の生息場所復元のための除草作業方法を考案し、除草に取り組んだ。また、広範囲の除草を人力だけで行うことは困難なため、除草剤の利用が可能であるかを検証するため、草原に生息するクモに対する除草剤の影響評価に関する基礎的な実験を実施し、特定の除草剤がクモの生存率に影響を及ぼしている可能性が示唆された。