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2013年度 [ 地域志向 ] 丹沢山地に分布する県絶滅危惧種シウリザクラの生息状況調査

2013年度 [ 地域志向・概要 ] 丹沢山地に分布する県絶滅危惧種シウリザクラの生息状況調査

取組代表者

谷 晋 【総合教育センター 教授】
(湘南校舎)

共同取組者

伴野 英雄(桜美林大学 教授)

取組の概要

 シウリザクラ(写真1左)は本州中部以北の冷涼な森林内に生育するサクラである。神奈川県での分布は丹沢山地の丹沢山堂平と蛭ヶ岳周辺に極限され、生育個体数も400前後と少ないため、神奈川県の絶滅危惧種ⅠBに指定されている。
 このシウリザクラに重大な食害(写真2)を与えているのが、サクラスガという体長1㎝程度の小蛾で(写真1右)、本州ではシウリザクラが唯一の食餌植物である。このため、シウリザクラの絶滅はサクラスガの絶滅にもつながる。両者は丹沢山地で共存してきたが、近年サクラスガの大量発生の頻発により深刻な被害を繰り返し受けたシウリザクラの衰退が、急速に進んできた。2009年を最後に一旦被害は沈静化していたが、2012年から再びサクラスガの密度が増加し、2013年には翌年の大量発生が可能なレベルにまで達している。現時点でのシウリザクラの生育状況を正確に把握しておくことは、2014年以降のサクラスガの食害とシウリザクラの衰退の関係を明らかにする上で不可欠であるために本調査を計画した。
 丹沢山地に生育する全個体に個体識別のラベルをつけ、GPSを利用しての位置確認、胸高直径の測定、枝枯れの程度による衰弱度の判定などを行う。

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取組の成果

 現在、全体の3/4に相当する約300個体のシウリザクラについて調査が完了している。中間結果として、以下のことが明らかとなっている。
 丹沢山地のシウリザクラの分布は、図1に示すように極端に集中的で、他の個体群とは隔離的に存在している。各地点での死亡率は10~50%とかなり異なっていた。最も被害が大きかったのは、蛭ヶ岳地蔵平で死亡率は47%に達していた。枝枯れによる衰弱もかなり進行しているために、個体群の絶滅も考えられる深刻な状況であった。次いで被害が大きかったのは丹沢山堂平C地区で、全122個体の半数以上に衰弱が認められ、このうち約30%はすでに枯死していた(写真3、図2)。C地区に隣接する約60個体からなる未調査のD地区でも同程度の死亡率が見込まれる。残りのA地区(80個体)、B地区(55個体)では10%程度の死亡率であった。これらから、丹沢山地のシウリザクラ個体の1/4程度がすでに枯死し、生存個体の多くにも衰弱が認められたため、今後のサクラスガの食害再発で、さらに枯死が進行していくことが強く危惧される結果となった。

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  • 取組テーマ:環境保全
  • 対象者  :指定なし

キーワード

シウリザクラとサクラスガ, 丹沢山地, 絶滅危惧種