取組の概要
巨大地震津波の来襲が重大な社会問題となった今、巨大津波に対する効果的な避難計画の策定法の確立は極めて重要なことである。そこで、我々は時々刻々の津波浸水を精度良く予測し、それに対する現実的な避難行動シミュレーションを可能とする数値システムを開発し、東海大学湘南校舎、伊勢原校舎と清水校舎の所在県である神奈川県と静岡県の市町に適用し、地元の安全向上に資する。具体的には、以下の内容で行う。
① ヒヤリングと現地踏査から平塚市、大磯町、静岡市等で必要な情報と資料を収集する。
② 花水川河口部(大磯町東部と平塚市西部)を対象に、津波浸水数値モデルを、防潮林や堀などの低減効果も精度良く考慮出来るように改良すると共に、必要な地形データと建物等占有率データを作成する。また、避難シミュレーション・モデルを、徒歩による避難に加え、路面冠水時の移動困難の影響を組み込み、自動車による避難も考慮出来るように改良すると共に、建物・施設や避難に必要な実道路ネットワーク、地区単位の人口データも作成する。
③ 神奈川県の想定津波(慶長地震津波、1605年)による浸水現象を、県の計算格子(36mと12m)より分解能を高めた計算格子(6m)で、主要な陸閘・水門開放状態にてリアルタイムで再現する。また、この津波のリアルタイム浸水情報を用いて、歩行者と自動車が走行不能となる状況を把握し、予測性能の改良も試みる。
取組の成果
まずは、津波シミュレーションによる浸水予測の結果を示す。花水川河口部に慶長地震津波が来襲した場合の再現結果を図-1に示す。汀線付近での津波高さは約6.3mであるが、海岸堤防の天端高は6m程度あるため、これを越流する海水量は比較的少ない。しかし、花水川河口部の河川堤防の天端高は6~4.5m程度で、低天端部から大量に越流する結果となった。最大浸水深は花水川東側の約2.3mである。また、第八陸閘等からの浸水も無視できないことが明らかとなった。
次に、避難行動シミュレーションの状況を図-2に示す。対象地域の避難所の位置、道路ネットワーク、地区単位人口を設定し、徒歩及び自動車避難行動シミュレーションのプログラムを作成した。