取組の概要
本事業は、湘南校舎・教養学部芸術学科が主導するかたちで、札幌校舎・国際文化学部デザイン文化学科との連携および熊本校舎・経営学部の監修を得ながら、全国連動型地域連携の取組みとして実施した。各校舎周辺との自治体連携により芸術を通じた大学開放の可能性を試み、大学を中心とした多世代交流を促すことを目的としている。今年度は湘南校舎および札幌校舎において具体的な取組みを実践し、相互の取組みにおける課題や問題点を共有することをめざし、各校舎間の実状に即した発展形態を模索した。また同時に熊本校舎における発展の可能性を検討した。
湘南校舎では、音楽・美術・デザインの22種類のプログラムを計画して「TOKAIおひろめ芸術祭」(10月11日/湘南校舎)を開催し、市民453名に来場いただき大学施設を活用して芸術に触れる取組みを行った。当日は全教職員と学部生および院生約130名が対応し、にぎわいのある市民交流の場を創出した。また11月に開催した「芸術学科公開講座」では、音楽・美術・工芸3講座を4回シリーズで催し、公募によって参加した50歳以上のシニア25名を対象に芸術系の高等教育を実践的に試行した。また1月下旬には講座の報告展を東海大学サテライトオフィスで開催した。
札幌校舎では、10月下旬に教員と学生が主体となって2050年の札幌を考えるワークショップの成果を基に、学外からの報告と合わせて企画した展覧会「Sapporo_2050」を、札幌デザインウィークの中で催した。公開講座の計画スケジュールは、開催時期が年度末に近くなってしまったが、様々な問題意識をもつ一般市民を対象としたワークショップと連続講座を予定している。2月14日に、初音ミクで有名なクリプトン・フューチャー・メディアが運営する札幌市内のMIRAI.STカフェ内のフリースペースにて、「地図で読み解く札幌のまち・みらい」と題して、まち歩のフィールドワークをもとにして、札幌の未来を想像するワークショップを開催した。また2月から3月にかけて連続講座として「老年学的見地からみた健康な街と暮らし」「芸術が繋ぐ高齢者と地域と大学と病院」「クリエーティブからみる札幌とその未来」を市民参加プログラムとして開催する。
また各校舎間の情報共有および議論の機会として、メール等での日常的なコミュニケーションを前提に、9月には芸術学科とデザイン文化学科、11月には芸術学科と経営学部の話し合いが、それぞれ各学部学科の代表教員間で行われた。
取組の成果
湘南校舎における取組みでは、芸術における大学開放の意味や価値が実証されるかたちとなった。「TOKAIおひろめ芸術祭」では来場者はファミリー層が中心であったものの、当日回収されたアンケートのほとんどに「今回のような取組みが年1回でも開催されることを期待する」との回答がほとんどであり、学内施設を利用した教職員・学生と市民との芸術交流の機会が求められていることを実感した。また「芸術学科公開講座」の修了式に実施されたアンケートにおいて「シニアの方にとって大学で芸術系高等教育を学ぶ価値はある」と感じた方は全員であり、シニアの方々にとっての大学において芸術を学ぶ価値が高いことを再認識させられた。
また札幌校舎においては地域特性や校舎立地の違いから湘南校舎のような大学に市民を招き入れる取組みよりも、札幌市街でのサテライトキャンパス型公開講座や、美術系デザイン系イベントなどにおける展覧会形式が適しており、学外関係者と連携する取組みが有効であるとの感触を得た。キャンパスが推進している地域や商店街との様々な連携の他、札幌芸術の森美術館とのパートナーシップを含む包括的な連携協定を結んでおり、今後、それらの協力関係を活かした展開を具体化できる可能性がある。
結果、本事業の目的である大学を中心とした芸術や文化による多世代交流の創出は、全国各地に共通する地域コミュニティの課題に適した取組みであり、展開手法は地域により異なるが全国連動型地域連携の取組みとして発展する可能性が高いと判断した。