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2014年度 [ 地域志向 ] 三保松原の保全に向けた松葉の木質バイオマスガス化発電への利活用

三保松原の保全に向けた松葉の木質バイオマスガス化発電への利活用

取組代表者

 田中博通 【海洋学部環境社会学科】
(清水校舎)

共同取組者

篠原正人(東海大学海洋学部海洋フロンティア教育センター)、東惠子(東海大学海洋学部環境社会学科)

取組の概要

取組の概

2013年6月、三保松原を構成資産に含む富士山の世界文化遺産登録が決定した。高度経済成長期以降、松葉を燃料として使用しなくなったため、松原内には松葉が堆積し、富栄養化が進むことによりマツの生育環境が悪化し、年々マツの本数が減少している。現在、熱心な地域住民の様々な団体が松葉のエネルギーとしての利用やその他の有効利用について活動を行っている。

そこで、現在開発している小型木質バイオマスガス化発電装置を用いて、松葉を燃料とした電・熱供給について、地域関係者や行政関係者の協力を得て持続可能な国土のあり方を念頭に取り組んだ。

 

取組の成果

図-1 クロマツの分布面積
三保で活動する団体(NPO法人三保の松原・羽衣村、三保松原フューチャーセンター)の協力を得てマツ葉を回収し、マツ葉とマツ葉(落葉)について基本的な元素と金属などについて成分分析を行った。マツ葉とスギの成分を比較すると、炭素、酸素、水素、ミネラルと鉄はほぼ同じ成分量であるが、海岸に生育しているためマツ葉の塩素量は多い。マツ葉(落葉)の真発熱量は14.4MJ/kgであり、気温20℃、湿度50%の平衡含水率を11%として、マツ葉を1時間当たり20kg投入した場合の投入熱量は71.3kWとなり、マツ葉は燃料として十分利用できる。

S-1-1_~1(田中博)

また、GIS解析から求めた三保地区のクロマツの面積は約336,000 m2であった(図-1)。ボランティアで毎週2回(水、土曜日)マツ葉回収を行っている団体の協力を得て、マツ葉拾いを行った(写真-1)。担当した155m2の清掃範囲で57.5kgfのマツ葉を回収した。三保にあるクロマツの生育面積から換算すると、1回の清掃で回収できるマツ葉量は124,600kgfとなる。現在開発している投入量が20kgf/hの木質バイオマスガス化発電装置だと連続運転で260日分の燃料に相当する。三保の松原で回収できるマツ葉量は、発電の燃料として使用するには十分の量であると言える。

2S-1-1_~1(田中博)

現在開発している小型木質バイオマスガス化発電装置(写真-2)は、20kgf/hのチップで10kWの出力があり、8時間の安定した連続運転が可能である。現在、1,000時間の連続運転を目標に装置を改良しているが、タール除去により発生ガスを清浄化するため研究開発には時間と開発費が必要となり、本年度の研究期間内では実現しなかった。また、ECU(エンジンコントロールユニット)の修理に時間を要してしまったため、三保の松原で活動する団体、行政機関を対象に行う予定であった公開稼働試験を実施することができなかった。 A/F(空燃比)に関する制御の問題が解決されれば、今後、マツ葉による公開稼働試験を行うことは可能である。

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  • 取組テーマ:エネルギー・ハーベスト
  • 対象者  :指定なし
  • 取組タイプ:社会貢献
  • 連携自治体:静岡市