取組の概要
高齢化社会が進み、生き生きとした老後生活を送る方法が注目されている。病気にならないで生活ができる寿命を健康寿命と呼び、健康寿命を平均寿命に近づけることが、今後の老後生活では重要である。大学や地域コミュニティで開催されているカルチャースクールや公開講座などに参加し、スポーツやボランティア活動などで高校生や大学生のような若者世代と高齢者が世代を超えて交流することによって、病気にならず、生き生きとした老後生活が送ることができると言われている。特に、シニア世代と若者世代の交流を増やすことは、健康寿命を延ばすと言われている。そこで、地域住民のニーズを調査し、教育プログラムを設定したり多世代との交流の機会を増やしたりすることが求められている。本プロジェクトでは、神奈川県秦野市をはじめ、北海道札幌市南区などを対象とし、近隣住民のニーズや現在の課題を汲み取るため、アンケート調査を実施した。
取組の成果
高齢化の進むアメリカでは、社会定年退職後、元気な人が入居する施設として、CCRC (Continuing Care Retirement Community)が注目されている。CCRCでは、大学で学ぶ機会が多くあり、教員や大学生との交流が盛んに行われている。2014年3月研究代表を初め、3名の教職員にてアメリカのCCRCを視察した。また、5月には、米国視察団が集まり、座談会を開催し、アメリカと日本の老後を比較し、今後訪れる老後生活について話し合いを行った。健康寿命を延長するためにもCCRCの取組が注目されており、高齢化社会の進む日本でも日本版CCRCの立ち上げが必要とされている。 東海大学では、2000年4月よりエクステンションセンター開設され、多くの地域住民に向けて生涯学習教育を行ってきた。受講生の多くは、高齢者であり、受講後のアンケート調査では「教養を深めたい」「スキルアップのために受講した」とモチベーションの高い答えが多かった。エクステンションセンターでは、生涯学習教育の取り組みとして、講義だけでなくフィールドワークや子どものための情操教育など取り入れ、多世代の受講者に満足度できるカリキュラムを実施している。これらの取り組みにおける課題や他学での取り組みを検証するために、中部大学アクティブアゲインカレッジの視察を行った。視察先では、受講生との対談と担当教員との意見交換を行った。受講生は、学習意欲が非常に高く、今後知識を地域に活かしたいという想いが強く感じられた。地域の高齢者と連携したCOCプログラムとして参考となった。
また、秦野市大根地区自治会連合会と秦野市西地区自治会連合会、札幌市南区南沢地区町内会連合会の協力により、本学と近隣住民との交流・連携に関するアンケートを行った。大根地区では、約6割の住民が大学で開催される公開講座やセミナーへの参加を希望していた。また、半数以上の住民が大学の研究機能や教育機能を活かした交流・連携をしてみたいと考えていることがわかった。さらに、本学学生と防犯や防災での協力を望んでいる住民が半数を超えていた。今後の大学開放に向けて、参考になる情報を得ることができた。
多世代コミュニティの実践として、教養学部芸術学科音楽学課程では、財団法人鉄道弘済会弘済学園にて、認知症病棟や高齢者デイケアを訪問し、学生と一緒に昔懐かしい曲を歌ったり、高齢者が楽器に挑戦したり、交流を行った。音楽だけでなく、若い学生との交流を楽しむ声が多かった。このように、東海大学において、学部学科やチャレンジセンターなど様々な方法で地域と学生の交流が行われている。今後も、より多くの地域方々が参加できる情報の公開が必要であると考えられる。