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2015年度 [ 地域志向 ] パブリックアチーブメント教育を通じた地域連動による人づくり

パブリックアチーブメント教育を通じた地域連動による人づくり

取組代表者

東 惠子 【海洋学部 環境社会学科教授】
(清水校舎)

共同取組者

小林 俊行(課程資格教育センター教育学研究・清水教養教育センター教授)

取組の概要

2014年度 To-Collaboプロジェクトによりパブリックアチーブメント教育は、若者のみならず地元住民、行政、企業などの多世代や異業種の参画者にパブリックワークの知識・スキルの修得、地域観光振興への貢献力育成と観光拠点の抽出が行われた。2015年度は、継続プロジェクトの進行過程に参画者意識調査、分析を通してパブリックアチーブメント教育プログラムを体系化し、汎用性のある教育プログラムを構築する。また地域クリエーター(担い手)の拡充と地域コーディネーターの育成にある。静岡市第三次総合計画として「歴史文化」観光都市の実現があげられ、2015年の徳川家康没後400年祭等のパブリックワークをテーマにし、自然環境や歴史文化の保全に責任を持つ「持続的な観光」を主軸に捉え、地元住民、地元自治体(静岡県・静岡市)、静岡市文化振興財団、生涯がクシュセンター、清水港湾関連企業、観光業等の協働参画によるパブリックアチーブメント教育を展開する。
建学の地富士山世界遺産三保松原の保全・活用のための知識とスキルのための人材育成として三保松原文化講座を開設、保全活動の実施を通し、地域クリエーター(担い手)の拡充、地域コーディネーターの育成プログラムにより地域と連動した大学の役割、機能、その体制を構築していく。
当該プロジェクトの新規性としては、地域の社会問題(地域の観光振興)に対して意思決定を行うパブリックアチーブメント教育の展開にある。また、本教育プロジェクトに参画する地元自治体(静岡県・静岡市)、地元住民、観光業者、観光客等の異なる価値観による協働の取組は、地域コミュニティ全体で地域特有の環境資源を捉え直すことになり、「主体的な地域」という新しい社会秩序の創造とグローバルな視野を持つ人材の育成が期待される。

取組の成果

 「世界遺産三保松原-松原の継承と地域振興」では、三保松原の貴重な松林保全対策を適切に学ぶことを目的に講演会、駆除に即効性をもつ薬剤散布ラジコンヘリコプターのデモストレーションや松葉カキ活動、幼松の植樹等の知識と実践を学内外を対象に一年間通して行った。プロジェクト終了後のアンケート調査からは、講義と共に実践活動を行うことにより活動の意義が理解できるという回答である。
 また、世界遺産登録直後は急増した観光客であるが、3年経つ現在では観光客の減少、滞在時間が1時間弱と著しい単発観光である。また観光客のマナーの悪さに地元住民は疲弊している。この課題を捉え学生達による松原保全活動団体調査、観光客へのヒアリング等を行った。加えて静岡市の依頼により「御穂神社及び神の道周辺道路における交通安全対策ワークショップ」に地元連合自治会、NPO三保松原・羽衣村、静岡青年会所、フューチャーセンター、海洋学部大学生、静岡市行政担当者の参加36名による3回のワークショップを開催し、御穂神社、神の道の道路整備を年度末までに検討、課題解決策を導き出す。ビジターセンター、駐車場、羽衣公園が整備予定であり、よりよい世界遺産コアゾーンの整備に向け、次年度には、社会実験を行い検証し、より改善していく予定である。
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 次に「清水港湾緑地折戸潮彩公園プロジェクト」では、静岡県清水港管理局の依頼をうけて11000㎡の港湾緑地整備に向け、折戸地区自治会、PTA、子供会、国・県・市の行政担当者と共に計12回のワークショップを開催、開催時には学生が資料を作成、ファシリテーターを務めている。基本設計、実施設計、基盤整備が終わり、計画・予算・整備の公共インフラ整備の工程とその後の維持管理を通し授業外の取組として専門性を学び、利害間参加者における合意形成、アドボガシー・プランニングを実践することができた。整備段階では、広い芝生広場を4月からエスパルスグランドの種芝を育て、6月に2万5千ポットを地元住民、海技短大、翔洋高校、海洋学部の学生、企業から340人が集まり芝植を行った。それまでは限られたワークショップメンバーにより、より良い公園を目指してきたが、大勢の人々による芝植を目の当たりにし、学生達は、それまでの試行錯誤の取組みによる苦労が一気に払拭され、地域のための公園づくりに携われたことへの喜びを経験している。いよいよ2016年3月23日完成式典が行われる。今後は、後輩達のワークショップ参加により地域と共に末永く利用され愛される公園づくりの引き継ぎも決まっている。
 また、「ドリームサイエンス2015 in Shimizuへ出展」は、静岡市と協働の取組により2ブースを出展した。静岡市経済局清水港振興課とは「富国有徳の美しいみなとづくり」では、学生達による来場者への清水港・みなと色彩計画により産官学民の協働の取組みのパネル、色彩のサイエンス等の紹介、来場小学生には翔洋高校生と共に帆船模型の体験も行った。また、静岡市歴史文化課と治山林道課と共に「富士山世界遺産三保松原の保全」世界遺産三保松原の説明パネル、一年間を通じた松害対策の模型やマダラカミキリ標本を使用し松原保全を啓発する活動を行う2ブースを出展した。最後に「東静岡駅周辺の文化力拠点としての景観・まちづくり」は、東静岡駅周辺に静岡の文化力拠点として相応しいまちづくりを目的に静岡市都市局建築総務課の協力により、東静岡駅周辺の景観まちづくりアンケートを行った。学生主体にアンケート調査設計、東静岡駅周辺住民を対象に2091戸にアンケート調査を実施した。ポスティング配布、収集、集計、結果分析を行い、静岡市建築総務課担当職員とタグを組む現況調査等を協働で進めている。専門知識を習得しながら、景観・色彩分析を行い、今後は東静岡駅周辺地区の景観、緑化計画の策定や居住者参加型のまちづくりの実現を展開していく。学生達は、アンケート調査集計過程を通し居住者から住民の満足、重要度、不満や期待感などの住民のリアリティに直面し、モノの見方、考え方に変化が表れている。市担当職員との意見交換を繰り返す資料作成を通じジョブ・トレーニングとしてもとても有益であることがわかった。

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 以上の2015年5月~12月3日までの上記プロジェクトの参加者に対し意識調査を行い、
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テキストマイニング等を含む意識変化の分析を行った。調査結果の抜粋を以下に示す。

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 アンケート調査を因子分析し、学習効果、満足度、協働性、自己成長の4因子が抽出された。これまでのパブリック・アチーブメント教育を通じて、学習効果84%と満足度74%を示し、体験や学習を通して知見を得たという学習効果、人や地域に役立ったという満足感、充足感がみられている。
 自己成長55%、協働性58%という結果は、ドリームサイエンス参加者の回答者が多く結果に反映されている結果である。
 また、プロジェクト前後の気持ちの自由記述においても、実施前は「面倒、不安」等、ネガティブな意見が78%、ポジティブな意見22%であり、実施後は「良かった」等ポジティブな意見が92%、ネガティブな意見が8%と大きく気持ちの変化がみられる。
 折戸潮彩公園整備ワークショップ、東静岡駅周辺景観まちづくり等の専門性に結び付くパブリック・アチーブメント教育プログラムにより、ジョブ・トレーニングにも結び付き自己成長、協働性が高い。特に折戸潮彩公園整備ワークショップ参加学生は、志望する就職に繋がったことも申し添えたい。
 「学習効果」「満足度」「協働性」「自己成長」の全ての項目において地元住民より学生の評価が高く、学生を対象にしたパブリック・アチーブメント教育プログラムは効果的であることがわかった。
 まとめとして、地域課題を通した協働参画型によるパブリック・アチーブメント教育は、学生はもとより、参画者の地域社会の中での自分の存在価値の認識や地域や世界の問題とのつながりを発見する機会となる。実践型学習のアプローチの可能性は、ポリティカルリテラシーを育み主体的な市民の育成に結び付くと考える。

  • 取組テーマ:地域観光
  • 対象者  :指定なし
  • 取組タイプ:教育
  • 連携自治体:静岡市