取組の概要
近年は訪日外国人の関心や興味が多様化している。従来の観光地に加え、居酒屋や銭湯、デパ地下等が外国人に人気だという。しかしホスト側の日本人にとってはそうした風景はあまりにも日常的すぎて、外国人の目には魅力として映っていることになかなか気づかない。
そこで我々は、国際教育センターの科目を履修している外国語に堪能な学生たち(留学生含む)の協力を得て、旅行で日本を訪れている外国人や日本在住の外国人に対し、日本国内で撮影した写真の提供を依頼し、今日、日本の何が外国人の関心の対象となっているかを分析した(その結果は写真展で紹介)。
そして、この分析結果を基に、外国人にとっておもしろいと思われる場所を伊勢原市内に探し、それらを集めた「ディープ伊勢原マップ」を作成した(2 月中旬現在、進行中)。このマップをもって、国際観光地としての地位確立をめざす伊勢原市には、ある意味で「何も変えない」ことこそが、新たな観光資源になりうるという提言とする。
取組の成果
写真の収集にあたっては、学生たちがSNS を通じて呼びかけたり、実際に鎌倉・みなとみらい等の観光地や空港、または日本在住の外国人が集まるイベント会場に赴いて、直接依頼したりした。学生たちは外国語を用いて主体的かつ積極的に活動し、そこには外国語の上達やコミュニケーション能力の向上といった学習的効果が認められた。その意味では、現在進行中のマップ翻訳作業も同様である。また伊勢原市内を踏査し、町の人たちと言葉を交わした経験は、地域貢献活動の一翼を担っているという彼らの意識を強くさせたにちがいなく、シティズンシップ教育としても本取組は有効であった。
収集された写真は実に多岐にわたり、このような場所や風景も外国人の目にはおもしろく映っているのだと、驚かされるものも多数あった。中にはきちんと整列している人々の写真や、田園風景の写真等もあり、日本人の公の場でのマナーや昔ながらの風景も大切にすべきであると改めて認識させられ、日本人の教員・学生にとっては日本の隠れた魅力を再発見する良い機会ともなった。それは写真展に足を運んでくださった市民の方々も同じであったようで、アンケート用紙にもそのような意見が多く書かれていた。
先に述べたように、マップに掲載するスポットを発掘するための現地調査は、市民の方々と学生たちが直接交流する機会となった。掲載の許可を得るべく、各店舗で我々の取組みを説明したが、これにより本学が地域貢献活動に力を入れていることを地元の方々に知っていただけただけでなく、特段箱物を用意しなくても、「普段着姿」のままが実は外国人には魅力なのであるとご理解いただけた。実際、マップに掲載しているスポットは、決して観光地ではないが、日本の日常生活・日常風景を楽しみたいという外国人観光客の昨今のニーズに合致する場所ばかりである。すでに伊勢原市に対しては、写真展等を通じて、こうした「普通の」場所のアピールが外国人観光客の誘致に役立てられる可能性を提示してはいるが、3 月に完成するマップを用いて、改めてそれを訴えていきたい。