取組の概要
2015年は、訪日外客数約1974万人となり、インバウンド観光が著しく進展したが、わが国の外国人観光客受入体制は未だに不十分であり、特に地方への外国人誘客を進め、地域活性化を図ることが要請されている。本事業は、湘南・代々木、清水、熊本、札幌の各校舎で、それぞれの地域との連携を深め、各地の実情に応じた適切なインバウンド観光推進策を、事業参加校舎全体で案出することを目的としている。学生を積極的に参加させ、PA教育を実施することも目的の1つである。
【代々木・湘南校舎】丹沢湘南地域におけるインバウンド観光推進のための情報発信をテーマとして、東京に滞在する機会のある訪日外国人に対して、丹沢湘南地域の観光魅力を発信する方策を、学生を参画させながら検討した。
【清水校舎】清水港に寄港するクルーズ客船14 隻を対象に訪日観光客の参加するバスツアー、まちめぐり等動向調査を行い、訪日外客のニーズに応じたオプショナルツアー等の提案を行うため、静岡県に特徴的な観光資源を記載したマップを作成した。
【熊本校舎】熊本地震後の観光による地域振興の現状と課題を明らかにし、デスティネーション・マネジメントの必要性を検証することを目的に、観光に関係の深い15 団体・企業(行政、観光協会、旅行会社、宿泊施設、その他観光機関)に対するインタビュー調査を実施した。【札幌校舎】北海道および札幌圏でのインバウンド観光推進の取組の一助とすべく、札幌市がインバウンド観光拠点として再活性化に注力している「定山渓温泉」を対象に、ホスピタリティ向上および魅力発信を目的とした「地域散策マップ」および「グローバルアイコン(ピクトグラム)」の制作に取り組んだ。
【事業全体】ほぼ月1 回TV 会議を開催して各地の課題解決に関する討議をし、インバウンド観光推進の方策策定に取り組んだ。12 月にはシンポジウムを開催して成果を公表した。
取組の成果
【湘南・代々木校舎】
都内の観光地や案内所、ネッ情報などを調査し、外国人観光客向け(英語)の丹沢・大山や湘南地域の情報がほとんど無いことを確認した。観光省のデータの分析と、外国人観光客の多い高尾山で実施した面接アンケート(n=205)の結果、知人からの情報や旅行者が発信したSNS 情報が来訪観光地を決める主な契機となっていること、訪日外国人の7 割が訪日後に訪問地を決めていることなどが判明した。これらを踏まえて今後、丹沢・湘南地域でのインバウンド観光推進戦略を検討することとした。
【清水校舎】
清水港を拠点にしたインバウンド観光実態調査を通じ、受け入れ環境の整備 ・サービス改善等の課題が抽出された。課題を解決するために「富士山絶景 清水港周遊 体験による交流型観光ツアー造成とマップ制作」を行った。今後は、インバウンド・国内観光客向けに作成したツアー・マップを、クルーズ客船で来訪するインバウンド観光客に配布し、その実効性を検証する。本年度を含めた取組み成果により清水港は2017 年1 月国際クルーズ拠点港に選定された。
【熊本校舎】
調査結果を各機関・団体にフィードバックすることにより、熊本地震後の観光による地域振興の課題についての理解を共有し、問題解決に資することとした。熊本県下の観光事業者を対象にしたセミナー等で、インバウンドを含む地震後の観光の現状を報告し、熊本における今後の観光の方向を検討するとともに、インタビュー等の調査活動に学生が参加することにより、卒業研究にその成果を反映させた。
【札幌校舎】
大学生の目線で地域を見ることで、従来からの魅力の強化、新たな魅力の発見・構築を目論んだ結果、個店のみならず、景観、アクティビティなどの発信も企図した新たな内容の情報マップを作成することができた。これは、学生の学びを活かすことで、「温泉街」の典型的イメージとは異なる、新たな印象・価値を提供するものとなった。「大学生と地域が連携した取り組み」という価値は、今後広く全市に発信することにより、観光地としての当該地域の魅力発信の一助となりうる。
【事業全体】
インバウンド観光推進について、各地域の実情に応じた寄与ができた。12 月18 日には、じゃらんの沢登次彦氏に講演を戴くと共に、成果を発表・討議するシンポジウムを開催した。2 月末に報告書を出版する。