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2016年度大学推進プロジェクト 「地域デザイン計画 ブランド創造事業」

2016年度大学推進プロジェクト・概要 「地域デザイン計画 ブランド創造事業」

取組代表者

富田 誠 【教養学部芸術学科 講師】
(湘南校舎)

共同取組者

池村 明生(教養学部芸術学科デザイン学課程 教授)、岡田 夕佳(海洋学部・海洋フロンティア教育センター 准教授)、松田 靖(農学部応用植物学科 准教授)、植田 俊(国際文化学部地域創造学科 助教)

取組の概要

 本取組は、各校舎のある地域ごとの地域資源を、価値ある商品やサービスへ転換し地域のブランドを創造するプロジェクトである。産官学それぞれの枠を超えて価値を共創する手法を検討し、札幌、湘南、清水それぞれの校舎において、地域の特産品の商品やサービス化等を含むブランド化を目指すプロジェクトである。札幌校舎では「札幌軟石プロジェクト」、湘南校舎では「ベジタマもなかプロジェクト」、清水校舎では「駿河湾産サクラエビプロジェクト」を実施した。

「札幌軟石プロジェクト」:2014 年度から札幌校舎で継続的に取り組んできた、札幌軟石の「リ・デザイン」プロジェクトを、本年度はより対外的に発信していくプロジェクトを計画し、準備を行ってきた。
 国際文化学部デザイン文化学科の中尾紀行教授の指導のもと、演習授業「プロダクトデザインB」にて学科学生が軟石を活用した作品・商品づくりに取り組んできた。地元石材加工業者および作家と連携し、石の切り出し、加工、展示・販売の現場を実際に見学・取材しながら学生各人イメージを固めていき、作品・商品として具体化した。その作品を広く全市的に発信するとともに、軟石のイメージの刷新を目的に、「ものづくりワークショップ」を札幌市地下歩行空間にて展示会・発表会を行った。

「ベジタマもなかプロジェクト」:湘南校舎では教養学部芸術学科の授業を利用して、平塚市農水産課と連携をとるかたちで「ベジタマもなかプロジェクト」を推進し、平塚市の地産地消を普及するため、和菓子・スイーツ・アイスクリーム・バーガー等に発展可能なオリジナルもなかの食品開発をスタートさせた。このプロジェクトは平塚市民・大学交流委員会の観光推進部会による大学交流事業としても連携しており、To-Collabo プログラムにおいては「もなか種」の金型製作段階を主に担当し、大学交流事業では開発された「もなか種」を使って平塚市内の飲食業関係者が試作する多数のオリジナルもなかを市民に披露する展示会を開催することとした。

「駿河湾産サクラエビプロジェクト」:2015 年度に、To-Collabo プログラム「地域志向教育研究」で「サクラエビ市場構造の現状と課題」を行った。本プロジェクトではその研究結果を踏まえ、地域経済活性化につながるサクラエビのブランド創出に取り組んだ。駿河湾産サクラエビのブランド化を進めるために、消費者へのアンケート調査、静岡県水産技術試験場等へのヒアリング調査、官能評価、アミノ酸分析をはじめとする成分分析を行うことで、様々な面から駿河湾産サクラエビと台湾産サクラエビ、類似エビの違いを明確化した。また、他のエビを駿河湾産サクラエビと誤認する消費者が存在することから、他のエビと区別するためのマークの作成を学生主導で行った。さらに、トコラボ参加学生(海洋研究会所属)主導でサクラエビの透明標本およびそれを用いたキーホルダーやマグネット等を作製した。

取組の成果

 2016年度の前半においては、産官学それぞれの枠を超えて価値を共創する手法を検討するための勉強会を開催した。一つ目は、「人々を巻き込みながら 良質なアイディアを創発するにはどうしたらよいのか」をテーマとし、広告代理店にてセクターの壁を越えた価値共創に取り組んでいる方を講師として招き、地域との対話を通した共創型の商品・ブランド開発の勉強会を大学のサテライトオフィスで開催した。
 二つ目は「デザイナーと当事者がどういう関係性を築けば良質なブランドデザインができるか」をテーマとして宮城県石巻市の漁業組合でアートディレクターとして活躍している方を講師として招き、公開セッション“ブランドを形にしていくための対話とは”を大学のサテライトオフィスで開催した。これらの取り組みで得られた知見は中間報告会にて報告・共有した。各プロジェクトにおける取り組み成果は以下の通りである。

「札幌軟石プロジェクト」
 『広報さっぽろ』、町内会の回覧板等を活用し、広く市民に本取り組みを発信するとともに、当日現場では軟石の歴史から、学生たちによる作品作りの経緯やねらいなどを発信した。ワークショップに参加した方々からは、「軟石が身近なものに感じた」といった感想を数多く聞くことができ、軟石の新たな活用方法を知っていただく機会を作ることができたと思う。また、加工のしやすさや材としての特徴を改めて知っていただき、その特徴を生かした日常使いの小物などができることに、非常に驚いている方々ばかりであり、軟石そのもののイメージ刷新も十分に達成できたのではないかと思われる。

「ベジタマもなかプロジェクト」
 湘南校舎における「ベジタマもなかプロジェクト」は、産学官民が参加し連携できる地域ブランド創造プロジェクトとしてスタートすることができた。特に本プロジェクトは「もなか種」を基本に様々な食品の開発に結びつけることができるため、民間事業者や市民が参加しやすい側面を持っている。今年度の事業成果は、3月3日から5日に「ひらつか市民プラザホール」において開催するオリジナルもなかを紹介する展示会「もなかでひらつかを食べよう!展」であるが、2月現在、試作品の開発に協力してくれている協力店舗15事業者に加え、平塚市で唯一「もなか種」を製造する民間事業者、そして平塚市農水産課および教養学部芸術学科の3年次生が中心となり展示会の計画を遂行しており、次年度以降の事業継続に向けた体制と基盤が整った。

「駿河湾産サクラエビプロジェクト」
 消費者アンケートやヒアリング調査の結果、干しエビの状態では類似エビをサクラエビと誤認している消費者や、台湾産サクラエビの存在を知らない消費者(サクラエビはすべて駿河湾産だと誤解している)が存在したため、他のエビと区別するためのマークの作成を、カクタスデザインの黒住氏の指導のもと行った。また、トコラボ参加学生(海洋研究会所属)主導で、サクラエビの透明標本を作製した。由比漁業協同組合から、標本だけでなく一般的に売れる商品も考案してほしいとの要望があったため、透明標本を用いたキーホルダーやマグネットなども制作した。これらが商品化した場合には、購入した消費者がサクラエビの形態について正しい認識ができるようになり、さらに、食用で販売する場合に比べて少量で高額な商品となるため、不漁に苦しむサクラエビ関連産業の一助となりうる商品と考えられる。しかし、透明標本は、活サクラエビを使用しなくてはならず、作製のための技術が高度で、専門機材や危険な薬品も必要となるなど、簡易に誰でも作製することはできず、解決すべき問題が多々ある。一般的に売る商品については、干しサクラエビを代用としデザインを工夫するなど、改善策を考案中である。これらの成果は、「富士山麓アカデミック&サイエンスフェア2016」で地域に披露している。さらに、3月に行われる平成29年度公益社団法人日本水産学会春季大会、2016年度水産海洋学会地域研究集会で発表を行う予定(受理済み)である。 

  • 取組テーマ:ブランド創造
  • 対象者  :指定なし
  • 連携自治体:札幌市南区、平塚市、清水市